別に、それは相手の気持ちをわかるという話ではなく、相手が何かをお願いしてきたり、何かを話題にしてきた際に、なぜ相手がそのお願いや話題をいまするのか、なぜこの文脈のなかでしているのかということから構造的・論理的に想像できるかどうかという意味で。
関係性を捉えているか
もちろん、それが可能になるには、普段から人が行う物事や、世の中で起こる事柄を関係性において捉える見方に慣れている必要がある。みんなが急ぎ足なのは、何かがその先にあるのだろうとか、先輩の機嫌がわるいのはさっきの会議で何かあったのではないかとか。
別に下手な勘繰りを常にしようとか、物事には必ず理由があるとかいうことではなく、個別の事象・現象をそこだけ切り出して捉えるだけでなく、大きな動きや流れのなかの要素として同時に捉えるクセをつけておくとよいという話。
そういうクセづけを自身にしていないと、他人の話を聞いても、ただ表面的な言葉面を聞くだけにしかならない。相手の意図が汲めないし、話が広がらなかったりする。
相手さえ気づかない相手の意図を汲む
人は必ずしも自分の意図を口にしない。それは本人が必ずしも遠回しに言おうとするからではなくて、はっきりした意図というのは本人にも明確ではないケースも少なくないからだ。会話をするなかで意図が形づくられることも少なくない。
その場合、相手の意図がうまく明確化されるか、形づくられるかは、聞き手側の力量にもよる。単に話者がうまく自分の意図を話せるかということだけではないのだ。
聞き手が話し手の意図を想像しながら適切な質問や受け答えができるかで話者のその後の内容は変わってくる。聞き手は自分の質問や受け答えを適切なものにしなければ、話者から自分が理解できる形で、相手の意図を表現した言葉を引き出すことはできない。
調査やビジネスの場のヒアリングで
もちろん、日常的な会話でそこまで相手の意図を汲み取らなくてはいけないシーンはあまり多くない。ただ、こうした相手の意図をできるだけ正しく理解することが求められることは、ビジネスの場での様々なヒアリングや仕事の指示を受けたりする場合には大切なことだろう。
あるいは自分自身の仕事では調査でのインタビューではまさにこうしたスキルを幾重にも重ねながら、相手の話のなかに現れる要素の関係性を頭のなかで何度も組み立てながら、相手が話す普段の行動のコンテキスト、因果の流れを明らかにしていかなくてはならない。
大事なことは、話している相手にも自分が話している意図ははっきりとしているわけではないと認識した上で、相手がそれを話ながら理解できるよう促すような質問や受け答えをすることだ。
自分が相手の意図を理解したければ、まずは相手にそれを明確に理解してもらうことだ。そうすれば自分が相手の話からそれを理解するのは、そうむずかしいことではなくなる。
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