生産力よりも消費力

最近、世の中をみていて、いまの日本社会に必要なのは、これ以上、生産力の向上を目指すことよりも、消費力を引き上げることではないかと感じます。

それはいわゆる需要と供給という話とはすこし違って、単純な経済的な話でもないと思っています。自分たちの生活や生き方や人生の理想が描けなくなっているのではないか。そう感じるのです。

それも個々人が自分の理想を描けなくなっているということよりも、社会としての構想力やコンポジションが欠けていて、理想の世界を描けなくなっているということのほうが大きい。それが根本にあっての消費力の低下というのがあるのだろうと感じるのです。

商品というモノばかりで夢を描こうとしすぎたツケ

いろんな商品・サービスに対して、これがあればもっと自分の人生がよくなるというイメージがもてなければ消費はとうぜん生まれない。むしろ、それがあってもなくても別に人生に大きな変化はないと思えるモノばかりに囲まれていては、モノが消費されないのは当たり前です。モノが夢を描けなくなっているし、モノに夢などを感じなくなっています。ニーズはあってもウォンツがほとんど喚起されないから、低価格商品のとりあえず消費へと流れる。

こう書いたからと言って、僕はこれを単純な経済の問題とは思わない。
むしろ、経済ばかりに没頭しすぎて、生産性をいかに高め、売上や利益を稼ぐかということばかりを考えすぎてきたせいだと感じます。商品というモノばかりで夢を描こうとしすぎたツケが回ってきているという感がある。

仕事と生活の分離

モノを売ることばかり、売り物をつくることばかりになってしまっているのに同期して、仕事というとお金をもらって行う仕事のことだと思うようになってしまってもいます。仕事が自分たちの生活や生き方や人生をつくるため、支えるためのものだという考えはもはやほとんどないのかなと危惧しています。

自分たちの毎日の暮らしをおくるための家事、子供を育てることや季節の行事や祭りのために準備をし参加すること、地域で共同で共有物の掃除をしたり手入れをしたり、そういう仕事が仕事だという認識が薄れてしまっている。

最近、ライフスタイル研究会(仮)準備室でよく、仕事と生活の分離ということを話題にしますが、仕事は金を稼ぐもので、それ以外の家や地域での仕事は仕事として認めなくなっている傾向が強い。職場と家庭が地理的に分離されただけでなく、金を稼ぐ仕事とそうでない仕事が分離してしまい、さらに、経済と文化、公と私が分離してしまっている。

それがモノをつくり提供する組織から、生活を締め出し、生活から離れていき、最終的に現在のような、新しい暮らしのヴィジョンを描けなくなってしまった大きな1つの要因ではないかと感じるのです。

既存の夢のフレームが疲弊している

日本国内に限れば、若い人にはクルマもマンションも売れなくなっているという傾向がある。ファストファッション、プライベートブランドと低価格商品に流れ、インターネットのコンテンツはますます無料化に進む傾向がみられる。ケータイだって明らかに売れなくなってきているし、持っていてもなるべく使わないようにしている人もいる。

こうした傾向を単に好奇心のなさとか興味の範囲が狭いとか、不景気の影響だとか片付けるのはたやすい。でも、真実はそんなことではなく、もっと単純にモノが夢を描けなくなってしまっているということにすぎないのだろうと思う。
マーケティングによって夢を消費させるという方法が、これだけモノや情報が増えたなかでは成り立ちにくくなっているのだろう。

そうはいっても実はモノや情報は単純に多すぎるのではない。それらの過多は既存の観念のフレームのうえでの混雑であり、飽和なのだと感じます。マーケティングによて次々に新しい商品を開発し広告するという既存の夢のフレームが疲弊しているということなのでしょう。あるいは科学技術や情報技術主導で明るい未来をつくりだすというフレームが飽和してしまっているのだろうという気がします。

新しい夢のフレーム

とはいえ、実は別のフレームでみれば、足りないモノも情報もまだまだあるのだけれど、そうしたモノや情報を魅力的にみせる別のベースとなる夢のフレームが描けていないからこそ、ここまで消費力が落ち込んでしまっているのでしょう。

こうした状況を打開し、新たな消費力を生み出し活性化させることが、来年以降、本格的に求められるのではないかという気がしています。
新しい夢のフレームを生み出し、そのフレームの上で新たな生活、生き方、人生を送ることができ、それに必要とされる仕事やモノが消費される。そうした新たな価値観、世界観、人生観のベースとなるフレームをいかにつくりだせるか。そうした作業が急務なのではないかと感じています。

新たな働き方、新たな人間関係や人とのつながり、新たな自然観や自然との接し方。
そうしたことに関する議論や活動がすくなくとも水面下では活発になってくるのではないかと思います。

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