ずっと昔、そう、世の中がまだWeb1.0真っ盛りで、まだ、インターネットバブルも弾ける前のこと、今思えば、はてなとMixiを足して2で割って、時代の進歩の分を差し引いたようなコミュニケーションサイトを作っていたことがあった。
30才になる記念に、と作ったのでもう7年も昔のことになる。
サイトの機能としては、会員登録性で、登録すると外部にも公開できる簡単なマイページがもてる。プロフィールと私書箱というWebメール機能、そして、日記の書ける1枚だけのホームページだ。もちろん、このマイページのデザイン変更はテンプレートからの選択やユーザー独自に作成した壁紙やイメージ画像を用いることで自由に変更できた。
そのブログもどきMixiの日記もどきのページはサーバー容量の関係もあり、3つほどのフリースペースを上書き更新する形でしか利用できなかった。つまり、日記のアーカイブ機能がなく、日記的な更新を行いたければ前の情報を消して新しい情報を書き込まくてはならなかった。当然ながらトラックバック機能などはないし、RSS/Atom Feedも配信しない。
しかし、更新通知機能がないわけではなかった。そのページが更新されると更新通知がMixiのトップにあたる各ユーザーの管理画面ページのほうにリアルタイムで表示され、かつお気に入りに登録しておいたユーザーの更新はメールでもお知らせしてくれる機能を持っていた。
また、Mixi同様に掲示板形式のコミュニティが立てることもできた。個人間のコミュニケーションのためには、先に書いた私書箱というWebメール機能も用意されていた。当然、これらにもお知らせメール機能を実装していたので、自分あてのWebメールや掲示板への返信があれば、すぐに知ることができた。
情報の淘汰(つまり、価値ある情報とそうでない情報の選別)が起こるように、今もはてながブックマークやRSSリーダーで誰が人気かをその登録数で可視化しているように、お気に入りの登録数やアクセス数(これもMixiの足あと同様に個人が自分のマイページに来た人を確認できた)でランキングを表示することで、人気のあるユーザーの可視化によりコミュニケーションを活性化していた。
ブロードバンドもなかった時代だったからダイアルアップの使い放題の時間にはアクセスが集中してサーバー負荷でサイトの動きが重くなったりしたが、それでもアクセスしたがる人が絶えなかった。
一年半ほど運用していたのだろうか。登録者は合計で2万人くらいだった。
サイトの開発は僕一人で行い(しかもプログラムだけでなくデザインやテンプレート画像の作成も含めて)、今のはてなのように気づけば新しい機能が追加されていたり、そうした機能追加のお知らせも僕自身がマイページで告知していたから、今のはてなのやり方にはすごく親近感がある。さて、ここまで長々と昔話をしたのは、Web1.0とWeb2.0の違いがどこにあるかを世間で言われているのとは違った形で提示したかったからだ。
いま書いたように僕がはるか昔に作っていたコミュニティサイトは多くの点ではてなやMixiとの類似点があった(と思う)。
もちろん、ブログ、RSS、トラックバックなどの機能はないし、テーブルレイアウトの時代だからテンプレートのレイアウトの変更は不自由だった(それでも3種類のレイアウトん用意していたし、テーブルレイアウトなのはMixiも同じ)。しかし、それでも先に書いた通りの代替機能は用意されていて機能面では洗練度以上の違いはなかったように思う。
まぁ、それ以上の違いがあったにせよ、それは企画者、開発者としての僕自身の限界であってWeb1.0の限界ではなかったように思う。
つまり、ここで言いたいのは、Web2.0が当時と違うのはブロードバンド回線の浸透度合いであり、ブラウザの機能強化、Web標準への準拠度合いであり、サーバーをはじめとするインフラの低価格化であり、XML技術の標準化であり、ユーザーのニーズや開発者の実現したいことの根本的な変化ではないという点だ。
もちろん、それらもかつての夢が現実化したことで新たな欲求が喚起されたりもしていることだろう。しかし、それもあくまで線形な変化でしかない。
また、当時とはインターネット利用者の数も個人、法人ともに異なるし、携帯電話でのインターネット利用もまだできなかった。とはいえ、それも技術の浸透、水平展開的な話でしかないだろう。
つまり、目指した方向性そのものは何も変わっていないのでないように思うのだ。
その意味で最近僕自身はWeb2.0がWeb1.0と非常に地続きなものだと強く感じている。
ただ1つの例外、Googleを除いて。
先のエントリー「Web2.0とGoogleとセマンティックweb」で、GoogleはWeb2.0企業ではないと書いた。
しかし、Googleだけが地続きではない変化をインターネットにもたらしたかもしれないと思うとき、その突然変異体的な存在をどう扱えばよいのか、答えに窮する。
ただ1つ言えるのは現時点でもGoogleはほかの何とも似ていないということだ。
それに比べてWeb2.0はWeb1.0にあまりに似ている。
それは単に量的な違いと洗練度の違いでしかない。
もちろん、その2つの違いこそが『ウェブ進化論』にも書かれている通り、市場、社会に大きな変化をもたらすのだが、その方向性に新鮮味がないことには変わりない。
だとすれば、余計にいま考えるべきことは「変化するぞ」なんて騒ぐだけではなく(何故ならそれはかつて一度騒がれたことを単に洗練させただけだから)、変化が起こったあとの具体的な経済の仕組み、収入を生み出す新しい方法を考え、構築しはじめることだろう。
アドワーズが儲からないなんて言ってるヒマがあったら別の手段を提示してみるべきではないだろうか。
そうした思考の変化が人間に起こった時こそ、本当のWeb2.0がはじまるのではないだろうか。
web2.0
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