2009年11月16日

インフォグラフィックス ワークショップ 2

土曜日は木村さん主催のワークショップ「インフォグラフィックス ワークショップ 2」に参加しました。



しかも、めずらしいことに今回は講師側での参加ではなく、実際にワークをする参加者側としての参加です。というのも、前日にインフルエンザによる欠席者が出たということで、木村さんから「講師のなかで誰か参加者になってくれませんか?」のメールが来たんです。ほかの講師の方の顔を頭に思い浮かべて、これは僕が手を挙げておくのが無難だろうと思い、参加者になることを立候補しました。

ワークショップの講師をやるのは何度となく経験はありますが、参加者側で参加するのは初体験。いつも外からえらそうなこと言ってるわけで、こりゃ、なんとか形をつくらなきゃマズイなと結構プレッシャーを感じながらの参加でした。

最初のつまづき

今回のテーマは、参加者が5つのチームに分かれ、それぞれのチームに割り振られた右寄り・左寄り・中道の主張をもって、靖国神社を一般の方にもわかるよう靖国神社をインフォグラフィクスで紹介するというもの。



コンセプトは「何かと話題になるにもかかわらず訪れたことのない人も多い靖国神社。一般の人に理解してもらうためには、自分の主義主張は横に置き、まずは中立な立場で「見る、知る、理解する」ことが求められる。チャートの可視化で、他の人に理解してもらうためのアプローチを考える。」

「訪れたことのない人も多い靖国神社」。神社は好きで、伊勢神宮熱田神宮熊野三社厳島神社高千穂の神社などを訪れたことがある僕ですが、靖国神社は「訪れたことのない人」でした。やっぱり他の神社とは違うと思っていましたし、敬遠する気持ちはありました。



そんな僕にとっては「自分の主義主張は横に置き」というのは、靖国神社という厄介なものを相手にするには楽なやり方だなと感じたのですが、どうも必ずしもみんながみんなそう感じなかったようです。特に「右寄り」の主張をするチームに割り振られた方などは、自分の心情的なものとのギャップに戸惑っていた方もいたようでした。

僕自身は自分の主張などとは無関係に、機械的に割り振られた右寄りの主張を、あたかも本物の右の方にお仕事を依頼されて代わりに表現してあげるつもりになればいいのだなと思っていたのですが、そう割りきることが心情的にむずかしい方もいるんですね。「自分の主義主張は横に置き」ができない。

ここが僕には想定外で、最初のつまづきでした。
自分の主張とは関係なく与えられた主張を演じて表現するというワークショップの前提のところで合意ができていないとなると、これは大変だぞと感じたのです。

そして、実際、大変でした。僕のチームは最初のチーム内でのミーティングからバラバラ。なんとかひとりのメンバーの方がうまく調整してくれたおかげでいきなりの空中分解とはならずに済みました。あれはありがたかった。感謝。

最初に頭に浮かんだもの

僕自身は前日にいきなり参加者になることが決まったので、事前準備はほとんどする時間はありませんでした。

とはいえ、実は1ヶ月前に講師陣が集まって今回のテーマを決めた際、木村さんから靖国という案を聞いた瞬間、頭のなかに靖国を日本の古来の文化や、世界的な歴史や空間のなかに置くグラフィックのイメージが浮かんだんです。こういう時って、「最初にパッと<映像がしっかり浮かばない>と」あとはなかなか進みません。その意味ではすぐにイメージできたのはよかったな、と。こういう時にこそ、自分に溜め込んだ無駄な知識のアーカイブが役に立ちます。
そのイメージを忘れていなかったので、それから1ヶ月のあいだ、具体的な情報収集をまったくしていなかったにも関わらず、あまり躊躇せずに参加者側にまわることを決断できたわけです。前日はとりあえず、そのイメージを実際につくりあげるためのネタの準備だけはしておきました。

そういうイメージを持てていた一方で、グループワークのなかでいかにその自分が最初にもっていたイメージを壊すようにもっていけるかと考えると、これは結構大変だろうなとも予測していました。

結果からいうと、自分の最初のイメージを壊すというのには失敗しました。
メンバーのひとりの方がもっていた年表のイメージもうまくはまってしまったこともあり、1ヶ月前に頭に浮かんだイメージと大差ないグラフィックになってしまったのは僕にとってはちょっと残念。



もっとほかのメンバーの意見も引き出して最初のイメージを超えたものができればと期待していたのですが、どうしても「右寄り」の主張を演じるというところがネックとなり、うまくいかなかったですね。僕はもっと右寄りで、「愛国」って感じにしたかったんですけどw
よくワークショップに参加した人が消化不良で終わったあとも長々と消化しきれなかった部分を事後的に反芻してたりしていますが、その気持ちはわかりますね。僕もひとりでインフォグラフィックスをやり直そうかとも思っちゃいましたから。
でも、それをやっちゃだめ。そんな遊びにうつつをぬかすよりも、仕事で力を使うべき。それがハレとケのけじめですから。

5 planes

それから進め方に関して書いておくと、僕は戦略的に5 planes model的にやろうと考えました。
つまり、最初からビジュアルを考えるのはやめて、とにかく最初にどんな主張をどうストーリーとして展開するかという戦略・コンセプトを決めた上で、それに必要な要件の洗い出し、その構造化、骨格の設計を経て、その上にビジュアルを乗せようか、と。

これも結果をいうと、ちょっと時間が足りなくやりきれなかったですね。
構造化くらいまではなんとなくできたんですけど、もうすこし詳細な骨格づくりができなかった。骨格が決めきれていないのでビジュアルをともなう要素を画面に配置した際に、上平先生から指摘されたように要素間のつながりが見えなくなってしまいました。
今回、講師から急遽参加者となったという立場上、できるだけ僕自身の影響力が大きくなりすぎないよう、とにかく終始遠慮がちにしようと心掛けていた面がありました。そのこともあって、5 planesのことも明確にメンバーに提示しなかったんですよね。でも、これはあとになって思えば、進め方に関してはもっとちゃんと伝えてよかったかもしれないなと反省。

意見の合意はいらない

そもそも僕が5 planesでいこうと思ったのは、最初のチームでのディスカッションを終えた段階で、これはチーム内での考え方の合意形成をした上で作業を進めてたら、とてもじゃないけど、時間内には終わらないなと考えたからでした。
意見の合意は最初からあきらめて、それでも右寄りの主張が感じられるアウトプットをひとつ作るにはどう進めるべきか?

なので、靖国神社に見学に出かけた際も僕の頭にあったのはどう進めれば終わるかということでした。



資料館を見学したときも、そこで新しいネタを見つけようなんてつもりはこれっぽっちもなし。普通の観光気分で見ていて感じたものだけ持ち帰れば十分だろう、と。ようはフィールドワーク的な観察者の目はすっかり捨ててました。それよりも戻ってからの作業をどう進めれば終わるかのほうが僕の関心事でした。

そうやって考えた結果が5 planesで段階的に進めることでした。
もうひとつの戦略は、意見がバラバラなのを放置したまま進めるために、ポストイットによる要素の可視化はしないという選択でした。ほかのチームがこの手のワークショップでよく見かける光景のようにポストイットをがんがん使って議論を進めるなか(下の写真のように)、うちのチームはまったくポストイットを使いませんでした。

20091116g.jpg


20091116h.jpg


これは浅野先生に指摘されましたが、「KJ法が大好きな棚橋さんがいっさいポストイットを使わない」というのは、そうした意図的な選択も必要だったわけです。

結果としてまとまっているように見えるということ

とにかく今回のワークショップでは、はじめから自分たちが本来もっている主張や考え方などは関係なしに、機械的に割り振られた右寄り・左寄り・中道それぞれの主張をでっちあげて、あたかもそこに主張があるようなインフォグラフィクスを完成させればよかったわけです。極端な話、そこで表現された内容が完全にチーム内での合意形成ができていなくても、結果としてまとまっているように見えればよいわけです。

そのためにはコンセプトだけはなんとなく共有した上で、それを表現する要素は明らかに入れてはいけないものを除けばメンバーそれぞれが入れたいものを入れられるようにできればいい。それを可能にするのは画面上のエリア分割とそれぞれのエリアに何を配置するかと誰が具体的にそこにグラフィック表現を行うかという役割分担でした。
まぁ、この構造化くらいまではうまくいったかな。ひとつ中央のエリアに、左右の年表とコラムをつなぐものとして「靖国神社で祀られる人は〈命〉という神の名をいただいていること」や「敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花」の本居宣長のうたを入れるといった要素が抜け落ちたりしたのは、完全に時間のなさから生じたチェック漏れで、それも要素間の関係性を定義する骨格化の部分があやふやなまま、ビジュアル化に入ってしまったがゆえに起こったミスかな、と。

そういうミスさえなければ、実は意見の合意などなくても、最終成果としてのアウトプットが1つの形を成すようにすることはできるのだと思います。ここは5 planes modelなどを使った編集術の腕の見せ所ですよね。

あと制作するうえで気をつけたのは、すべてを言い切ってはいけない、ということかな。言い切らず、説明しない部分を残して、匂わせるということ。これも要素の関係性がきちんと示せなかったために、匂いにくくなってしまって、口頭での説明が必要になってしまったところは残念でした。

へとへと

という感じではじめて参加者側の立場でワークショップに参加したわけですが、あとで思えば講師から参加者側にまわったなんて余計な気遣いはせずに、もっと自分を出してしまってよかったのかもしれないなと思います。

あまり自分の影響ばかり強くなってしまってはいけないなと終止遠慮していましたが、それでも自分の影響が強く結果に反映されてしまったのは否めません。であれば、遠慮などせず、もっとリーダーシップを発揮してがんがん進めてしまったほうが中途半端にならず、よかったかも。中途半端に影響を与えてしまったところは、いっしょにやったメンバーには申し訳なかったな、と。

それにしてもあれだけの短期間で、あれだけのアウトプットを出すというのは、大変です。できる/できないではなく、体力・精神の両面で大変で、終了後の懇親会に向かった時には、もうへとへとでした。今週は水曜日の自分が講師をやったペルソナ手法のワークショップも含めて、2回もワークショップをやったというのが疲れの理由でしょうね。その疲れの代償として風邪もひきました。

終了後の懇親会での会話からインスパイアされたことはすでに「不安はなぜ起こるのか」と「見本とテンプレート」というエントリーにまとめたので、こちらもあわせて参照ください。

それにしても雨の中、参加された参加者および講師のみなさん、お疲れ様でした。
とても楽しい一日を過ごすことができました。ありがとうございます。

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posted by HIROKI tanahashi at 08:45| Comment(0) | TrackBack(0) | デザイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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