在り続けてほしいもののために、僕ができること

1ヶ月近く前のエントリーですが、なぜか運よく僕の眼の中(RSSリーダー)に飛び込んできました。

きっと眼にするタイミングってあるんでしょうね。エントリーの冒頭の部分の清水エスパルスの話は前にも読んだ記憶があるので、そのときは残念ながら読み飛ばしてしまっていたのでしょう。でも、あらためて今日眼にしてみて、この最後の部分に共感しました。

伝統工芸の職人を取材する「職人の哲学」というシリーズをやっていた時、一緒に取材に行ったカメラマンさんが、こんなことを言っていた。

「ぼくが以前、一緒に仕事をしていた編集長は、職人のところに取材に行くと必ずなにかものを買っていた。そのことが、その伝統工芸を守ることにつながるとわかっていたからなんですよね」

わたしに向けて、ではなく、職人さんに対して語った言葉で、いつも取材に行くだけのわたしは、「こういうものに在り続けてほしい」と言いながら、どこか距離を置いて買い物をするわけじゃない自分を恥ずかしく思った。高価で手が出ないことも多い。でも、その言葉を心に刻もうと思った。

僕の民藝好きはいまさらいうまでもありませんが、民藝の品を買うときの気持ちは、ここに書かれている気持ちに重なるものがあります。ものづくりをする職人だけでなく、そうしたものづくりを僕らに紹介する活動を続けていらっしゃる鎌倉・もやい工藝さんのような方々に対しても、「在り続けてほしい」と思ってお金を払っています。

なので、それは購入代金というよりも、僕にとってはささやかなお布施みたいな感覚だったりします。

ものとの出会い

そんな気持ちで、このわたなべ木工の欅のパン皿を買いました。

わたなべ木工の欅のパン皿


すこし前に「2009-07-12:オブザベーション@青山通り」というエントリーで、パン切りボードを買ったのを紹介したのとおなじ、わたなべ木工さんの仕事です。
もちろん、パン切りボードが気に入ったから、こちらのパン皿も買ったのです。

よいと思うものには「在り続けてほしい」と思うからこそ、自分で買えるものは買っておきたいと思っています。もちろん、それには「眼の力、感性の声」で書いたように、よいものを見落とさないように眼を鍛え、そして自分がよいと感じた感性の声を聞き逃さないようになることが必要だと思います。

先の雪朱里さんのエントリーに1か月ぶりに再開したのもタイミングなら、よいと思うものに出会うのもタイミングであり、下手をすればそれはもう手に入らなくなるかもしれないものだからです。手仕事のものというのは、本当に、在り続けてほしいと思っていてもなくなってしまうからです。

在り続けてほしいものだから―

先の一文のあとに雪朱里さんは、こう続けています。

「在り続けてほしいものだから、なくなったら嫌だから、お金を使う」

僕も最近そう思うのです。

そして、数日前の「遠くの町と手としごと―工芸三都物語/三谷龍二」で、「実際に使う人の視点にたってちゃんとものづくりをしている人たち自身の生活やそれを支える経済ということに関心が向いています」と書いたとおり、自分で買うだけでなく、もうすこし大きなところで自分で何か貢献できることはないかと模索しています。

その意味では、取材し文章にしていろんな人にそのものの良さを伝えていく仕事をされている雪朱里さんなどをうらやましく思ったりもします。

在り続けてほしいもののために、僕ができること。
それが僕がいま課題だと思っていることの1つです。



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この記事へのコメント

  • 雪 朱里

    言及ありがとうございます。
    いつもこちらのブログを拝見していたので、自分のブログが取りあげられていて、びっくりしてしまいました。

    わたなべ木工さんのパン皿とボード、素敵ですね。
    「実際に使う人の視点にたってちゃんとものづくりをしている人たち自身の生活やそれを支える」という視点、わすれないようにしたいと思います。

    このエントリーに引用した「職人の哲学」という連載は、残念ながらすでに終了してしまったのですが、現在は伝統工芸の職人さんが対象ではないものの、印刷出版にかかわる名工にインタビューをする連載をもっています。

    職人さんの手仕事のすごさと、生み出すもののよさを伝えていくことは、ライフワークのひとつとして続けていきたいと考えています。それもやっぱり、「在り続けてほしいもののために、わたしができること」のひとつですから。
    2009年08月04日 15:54
  • tanahashi

    > 雪 朱里さん、

    コメントありがとうございます。
    僕もブログを拝見させてもらっています。
    あのブログの雰囲気、そして、書かれている内容も興味があることが多いので。

    僕も、手仕事のすばらしさを伝えることを、どうにか仕事にしていければと模索中です。
    とりあえずは、このブログを通じて伝えることが、いまの僕にできることですが。
    2009年08月04日 21:32

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