『デザイン思考の仕事術』感想をいただきました・6

昨日のワークショップの帰り道、参加者のひとりのTakedaさんと、
  • 正解することにこだわるがあまり間違いを恐れて手を動かせない人
  • 間違えてもいいから手を動かして自分の答えを出そうとする人

の2種類の人がいるね。そして前者と後者では自分でいろいろトライしてみるなかで気づきを得るということに関するスピード感がぜんぜん違いますよね、といったような話をしました。

いうまでもなく気づきのスピードがはやく、多くの気づきを得られるのは後者です。

昨日のワークショップでも、間違えることなど気にせず、どんどん積極的に手を動かしている人のほうがいろんな気づきを得ているというのが、講師としてみていてもよくわかって、「あっ、この人、いま気づいた」っていうのが手に取るようにわかっておもしろかったです。

勘違い人がほとんどだと思うんですけど、人間って頭のなかだけでものを考えているんじゃないんですよね。むしろ、場のなかの行動において考えている。
それゆえ、自分の頭のなかで概念をこねくり回してるだけじゃ、気づき・発見・発想などは得られるはずもないんです。
そうではなく、いまいる場において他の人びとやまわりにある物事との積極的な関わり合いにおいて自分自身を動かすなかで自分の変化をしっかりと受け止めることをしなければ、考えなんてはたらかないのです。

これをわかって積極的に行動ができる人と、誰かが教えてくれる表層的な思考法やライフハックに頼っていると、結局はただただ時間を浪費するばかりで、何の気づきも発見も発想も得られなくなるんじゃないかな?

と、そんな出だしで、今回も3人の方(1名追加)からいただいた、『デザイン思考の仕事術』の感想を紹介していくことにします。

この中で自分が苦手なのは、第一条

1章の「デザイン思考の仕事術のための基本姿勢・七箇条」に言及されている方は多いのですけど、bentonさんもそのなかの1人です。しっかり読んでいただいているなと思いました。

この中で自分が苦手なのは、第一条。すぐにわかったつもりになってしまい、一旦わかったつもりになるとその後は、わかったつもりのことの周りをぐるぐる回っているだけになる。わかったつもりを前提にわかったつもりに都合のいい事象だけを集めてしまう。ネットで検索して他の人がまとめた概要の説明を読んでわかった気になる。簡単にわかったつもりになれて便利だけど、浅い、自分の身につかない、他人事の感じがする。

特に皆さん、第一条"「わかる」ことは重要じゃない。「わからない」ことにこだわる。"に注目されますね。ここが「仕事術」をタイトルに含みながら、巷に大量にあるライフハック本、仕事術・整理法関係の本と、本書が決定的に異なる部分をもっとも単純にあらわした部分だからなのかななんて感じたりもします。

これも昨日のワークショップの帰り道のことですが、Takedaさんに「棚橋さんが一番欲望を感じるものってなんですか?」と訊かれて、「たぶん、わからないことをわかろうとすること」だと答えたんですけど、本当にわかりたいと思えば答えを探そうとするのではなく自然と自分の「わからない」部分にこだわっていくしかないんですよね。

ハレの時間(とあるワークショップの感想を兼ねて)」でも「正解のない世界」について触れていますが、いまという正解も不正解もなく、ただひたすら行動するかしないかだけが意味をもつ時空間において「わかる」ということは、誰か他人が客観的に提供してくれる正しい解、正しいやり方をわかることではなく、正しい/間違っているという客観的な時空を超えて、自分自身で世界に対する回答をひたすら生みだし続けることにほかならないと思うんです。

それを時計の連続的な時間において、いまやるべきことは将来のためになることにしようなんて価値観で動こうとした途端、いまの動きが鈍ってしまう。
将来のためにいまを犠牲にした瞬間、身体が動かなくなり、安易な答えを求めるようになってしまうんだと思います。

とうぜん、そこでは経験のありなし云々なんてことは関係ないんです。一期一会の状況においてはすべてが初体験だと思った方がいい。いまという場に眼を向ければ、過去の経験に縛られて身動きとれなくなってしまうことのほうがよっぽど問題なのですから。

何の役に立つか?で動くのではなく、いまを生きるためにいまにまとわりついた幻影を振り払い、直接世界=自分自身に対峙したいという欲望こそが、「わかったつもり」の先への歩みの原動力になるのではないでしょうか。

私の中では本年度No.1

マーケッターの北川裕康さんからは、こんな評価をいただきました。こんな風に感じていただいて、ありがたいですね。

この本は、棚橋弘季さんの書で、私の中では本年度No.1です。読む価値ありです。1,500円と時間は無駄にはなりません。
日頃から、仕事の基本は設計とプロジェクト管理だと思っているので、手に取りました。
内容は目から鱗です。

北川さんもちゃんと読んでくださっているなと感じました。

やっぱり書く以上は「No.1」だと感じてもらいたいと思っています。すべての人に「No.1」と感じてもらうのは不可能だとしても、何人かの人にそう感じてもらえるようにしようというのは、書く以上は著者がとうぜん目指すべきことだと感じているので、正直、ほっとしています。

実際に試したことはないので試してみたいと思った

まだ読み始めたばかりの様子のGadget と本の日々さんからは、こんなコメント。

知っている知識も多かったが、実際に試したことはないので試してみたいと思った。また、About Face 3 は買って読んでみる必要がありそうだ。

「知っている知識」と書いていらっしゃるあたりが読み始めなんだなって感じを受けますが、何より「試してみたい」とか『About Face 3 インタラクションデザインの極意』を買って読んでみようと感じてもらえたのはよいなと思っています。

やっぱり本を書いてうれしいのは、他人の行動にすこしでも影響を与えることができたと感じることです。自分が書いたとおりにやってもらいたいなんてことではなく、読んでくださった方が自分で感じたとおりに動くきっかけになれればとよいなと思うのです。
実際、5章では「ここで紹介している方法もあくまで身体を実際に動かすためのレシピと思ってください。そのレシピを元にどう実際にそれぞれの仕事を料理するかは、皆さんそれぞ
れの現実の行動次第です」なんて書いていますからね。

「わかる」ことが大事ではなく、自分でやってみることが大事なんですよね。

デザインの本質をしっかりと押さえつつ、多角的な思考の刺激をもらえます

もう1つ感想を書いてくださっている方を見つけたので追加(2009-08-03追加)。

デザインシンキングがちらほら言葉として目につくようになりました。
わたしのお勧め本は、
「デザイン思考の仕事術」棚橋弘季著。

デザインの本質をしっかりと押さえつつ、
多角的な思考の刺激をもらえます。

これも2番目の北川裕康さん同様に、「今のところ、1番」と理解してよいのかな?


今後ともいろんな感想をお待ちしております。

『デザイン思考の仕事術』の感想を紹介するエントリーも今回で6回目。
たくさんの方に読んでいただいているようで、ととてもうれしいです。

これまでの感想は以下のリストから。



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