空気は目線で読む

あっ、空気って目線とかで読むんだなー。
今日はそんなことを感じました。

ある会議で進行役をやらせてもらったんですが、その場自体がはじめてだったことと出席者があまりに積極的な発言をしてくれたので、まったく仕切れなかったんですね。出席者の数も多かったし、話してるテーマが得意分野じゃなかったというのもありました。

でも、それだけの要因だけなら、普段ならもうちょっと仕切れたはずだったんですよね。それなのに、それができなかった。

どうして?

空気は目線で読む

なんでだろ?と思って気づいたのが、座る位置。

普段なら割って入れたはずのタイミングを何度か逃してしまったのは、発言者すべての顔が見えなかったからだと気づいたんです。よく思い出してみると、割って入るタイミングがつかめなかった人はすべて自分からは表情や身体の動きが見てとれない位置にいた人なんですね。

これ、重要だなーって思いました。
自分は普段、人の表情や身体の動きで、いつ誰がどんなタイミングで話すかを察知して、ちょうどよいタイミングで話に割って入ったり、話題を変えたりしているんだなー、と。

空気は目線で読むものなんですね。

輪になって話す

そんなことを思ったら、先日紹介した宮本常一さんの『民俗学の旅』にあった、こんな一文を思い出しました。

大道芸の面白さは舞台を持たないことである。観客は輪になって囲む。芸人には裏も表もない。自分のすべての姿を見せる。見る方も輪になることで仲間意識を持つ。考えてみると、私の幼少の頃までは、人が集まると輪になることが多かった。輪になって話しあったのである。すると余程無口な者でないかぎり発言した。

こういう形と、人の行動・心理との関係に気づけるのが、日本中をフィールドワークをしてまわって人びとの暮らしを観察し人びとの話を聞いてまわった宮本さんの凄さだと思います。それは同時にデザインする人にとって、いかに人びとが実際に暮らしている場で、物と人、人と人との関係を観察することがいかに重要であるかということだとも感じます。

そのような意味において、どういう形で話をするかって重要なことだと思っています。

今日のは逆に盛り上がりすぎて時間コントロールがうまくいかなかったんですが、反対に盛り上がらない会議だと、上の引用にあるように輪になって話すというのはひとつの手だと思います。四角いテーブルを囲んで、ホワイトボードがあるほうが前とかになると、必ず発言をしない人が出てきます。
KJ法などを使うワークショップのように床に大きな模造紙を敷いて、輪になった状態で作業を進めながら議論をすると盛り上がったりします。

逆に今日のようなケースだと、僕のように司会進行役になる人はみんな目線や仕草が確認できる位置にいないと、発言に割って入ったり、発言したげなのに発言できずにいる人を促すことができないと思います。

働く場の作分

昨日の「『ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術』は6月末発売」で目次を紹介したように、僕は新しい本の5章で【デザイン思考の「職場作分術」】と題して、デザイン思考で仕事をするためには、はたらく場そのもののデザインも必要だと書いています。

その場とは、物理空間でもあるし、リズムやタイミングのことでもあるし、はたらく場をよい場とするための趣向のことでもあります。僕はそれを働く場の作分と呼んでいます。

僕がここで作分という聞き慣れない語を使っているのは、千利休の一の弟子であった茶人・山上宗二が記した『山上宗二記』に「胸の覚悟一つ、作分一つ、手柄一つ」という言葉があるためです。『山上宗二記』ではこれを茶の湯の名人の条件としていますが、茶会という主客が相対し一期一会の場をつくりだすための条件とも解してもよいと思います。作分は茶会の場だけでなく、日本の文化における連歌会や聞香の会などの主客が集って行われる遊びの場を成り立たせる条件でもあって、ひとつの課題の解決を共同で行うデザイン思考のグループワークの場を成り立たせる条件を考える上では非常に参考になります。
拙著『デザイン思考の仕事術』

デザイン思考で仕事をするためには、その働く場の作分を工夫する必要がある。

人って自分でも意識しないあいだにも、他人の表情や仕草や視線から多くのものを(アフォーダンスとして)感じとって、自分の行動の判断をするためのリソースとして使っているはずです。それを踏まえたはたらく場の場づくりをしてあげる必要がある。

今日感じたのも、そのひとつの例だなと思いました。
仕事がうまくいくかどうかって、単にその仕事をする人の能力だけじゃなくて、こうした場の作分・工夫というのも大事なんですよね。だから、「特急列車はなぜ早いか?(その仕事はなぜ遅いか?)」でも書いたように、計画、準備が重要なんですね。

 

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