W型問題解決モデル

W型問題解決モデルとは、KJ法の生みの親として知られる川喜田二郎さんが、1960年代後半に問題発見~解決のためのモデルとして発案したもの。

文化人類学(民俗学)を専門とした川喜田さんのW型問題解決モデルは、人びとの暮らしを観察して集めた情報を元に、KJ法を用いて問題の全体像をつかみ、そこから問題解決のための仮説を立て具体的な解決案の検討にはいるプロセスを経る点で、いわゆるユーザー中心設計(以下、UCD)の考え方を先取りしたものであると僕は考えます。

川喜田さんのモデルをベースに、UCDの手法をあてはめると、こんな図を描くことができます。



さらにいえば、基本的にはインタラクティブなシステムを対象としたUCDと比べて、W型問題解決モデルはより広範囲に応用可能な問題解決法として評価することができると感じています。

ユーザー要求と組織の要求

W型問題解決モデルの特徴は、頭のなかだけ、あるいは、文献資料を参照する形で作業を行う思考レベルと、実際の現場や実物に触れたり観察したりしながら身体的に作業を行う経験レベルを行き来しながらの問題発見~解決を進めることです。

ここで先の図にもすでに描いていたように、思考レベルを企業活動の場、経験レベルを生活の場とし捉えなおすことで、企業と利用者側の双方の問題をうまくマッチングさせながら包括的な問題解決案の検討をする際にも有効だと考えられる。

ISO13407のプロセスでは「ユーザーと組織の要求事項の明示」という段階がありますが、W型問題解決モデルで問題発見の過程から問題解決の過程にシフトする段階での推論過程に、経験レベルから思考レベルへ、そして再び、思考レベルから経験レベルへの移行が位置づけられている点をそこに重ね合わせるとしっくりきます。

正しいやり方でKJ法を行う

こうやって考えると、あたらめてKJ法を含むW型問題解決モデルの発想法としてのまとまりには恐れ入ります。

特にデータ間のアナロジーを感じ取ってアブダクション=発想を浮かび上がらせるKJ法という手法は、ぜひ本当の意味で身につけておいてよい手法かと。そのためにも、なんとなくKJ法っぽいデータ整理ではなく、できるだけ正しいKJ法のやり方をとることがとても重要なことだと感じています。

もっとも注意を要することはなにか。それはたがいに親しいと感ずる紙きれ同士を集めることであって、このさい、「感ずる」という能力がさきに立たなければならない。ところが不慣れな人は、感ずるという能力よりもさきに、理屈を考えて集めようとする。
川喜田二郎『続・発想法』

この「感ずる」が苦手な人が多い。まさに「感ずる」よりも「理屈」に頼ろうとしてしまいます。「「知る力」よりも「観る力」」なんですけどね。とにかく感ずる力=センスを鍛えないと。

KJ法の要素データ(紙きれ)を集める際は、分析的な分類ではなくアナロジー思考で近接を見つけることなんですね。枠組みにあてはめる分析的方法ではなく、データ間の類似を感じ取るアナロジカルな感覚を駆使した統合的方法として。

そして、データをグルーピングする作業も、大から小へではなく、小から大へ。分類していくのではなく、個と個をつないでグループをつくり、そのネットワークを紡いでいくことかな。

発想の基礎体力

こういうKJ法だったり、ブレインストーミングだったりという基礎体力的なところを鍛えあげることが仕事の創造性を高めるのには必要なことかな、と。

図でいえば、思考レベルと経験レベルのかけ橋となった斜めの線の部分が重要で、方法よりも基礎体力を必要とするその部分が苦手な人が多いのかな、と。

どちらかというと、思考レベルか経験レベルの一方にある手法(ユーザー調査やペルソナ、ユーザーテスト)ばかりが注目されるけど、本当はこの斜めにつなぐ線上にある作業のほうが発想の飛躍のためには大事なんですよね。

 

関連エントリー


この記事へのコメント

この記事へのトラックバック