当ブログで今年注文の多かった本、ベスト20を紹介しておきます。
昨年に引き続きランクインしている本があるのが結構驚きです。
また、先日僕自身が「冬休みの読書におすすめする16冊の本」でピックアップした今年の16冊とかぶるものが少ないというのは、ちょっとさみしかったりもします。
そんなことを感じつつも、まずは20位から17位。
※書評名/著者名のリンクは当ブログ内書評です。
- 20位 脳と日本人/松岡正剛、茂木健一郎
- 今年のはじめに紹介した本です。松岡さんの茂木さんの言葉のキャッチボールのアクロバティックさに驚いたものです。科学と日本を同時に考えさせてくれた面白い一冊でした。
- 19位 知の編集工学/松岡正剛
- 19位も松岡正剛さんの本。松岡さん絡みは2冊の対談を含めて4冊ランクインしています。この本は松岡さんが自身の編集工学について語った一冊。前半は情報とは何かを教えてくれ、後半でその情報をもつ特徴をもとにした編集工学のテクニックの入口のところを紹介してくれています。他にも松岡さんの本を読んでいる僕にはあらためて松岡さんの考える情報観を整理できたという意味でよかったです。
- 18位 About Face 3 インタラクションデザインの極意/アラン・クーパーほか
- この本がランクインしたのはうれしい。僕はこの本がいまのところ日本語で読めるユーザー中心デザインの本ではベストだと思っているので。ユーザー中心デザインを学びたい人はこの本こそを読んでほしい。
- 17位 木に学べ―法隆寺・薬師寺の美/西岡常一
- 法隆寺、薬師寺の修復・復元に関わり、最後の宮大工棟梁といわれた故・西岡常一さんの話を口述筆記した本。「棟梁は、木のクセ見抜いて、それを適材適所に使う」「木のクセをうまく組むためには人の心を組まなあきません」。かつてのものづくりがもっていた思想を感じさせてくれる僕自身お気に入りの一冊。
続いて16位から13位。
- 16位 二十世紀の忘れもの―トワイライトの誘惑/佐治晴夫、松岡正剛
- これは20位で紹介した茂木さんとの対談集以上にものすごい対談が行われている驚愕の一冊。詩摘で科学的で音楽的で日本的。理系だとか文系だとかいう区別が本当に馬鹿らしく感じられる。そんな区別で何かわかった気になってる場合ではなく、そんな無意味な境界もぼやけて見えなくなるトワイライトの誘惑に心底浸ってみた方がいい。
- 15位 17歳のための世界と日本の見方―セイゴオ先生の人間文化講義/松岡正剛
- この本がランクインするんですね。確かに松岡さんの本としては格段の読みやすさ。しかも古代から近代以前までの世界と日本の歴史の核心が松岡さんの軽妙な語り口でわかりやすくたどれてしまうのはよいところ。僕としての不満は『山水思想』や『空海の夢』、『外は、良寛。』のような本にこそ、松岡さんの本の醍醐味があるのにと思うところ。この本を読んで興味をもった方はぜひそちらも。
- 14位 モノからモノが生まれる/ブルーノ・ムナーリ
- この本の書評を書いたのは去年の12月16日。ということもあってか、去年はランキングしなかったようですが、デザインの方法ということを僕がはっきり意識したのはこの本のおかげです。もちろん、それ以前にも人間中心設計のプロセスやIDEOのデザインプロセスなんかは知っていましたが、人間中心なんてことをいわずに、より一般的な形でデザインの方法、発想の方法を示してくれているのに触れたのは、この本が最初かもしれません。僕のなかでも転換点になった1冊です。
- 13位 デザインの輪郭/深澤直人
- 去年8位で引き続きランクインは深澤直人さんの著書。確かにこの本はいい本です。僕自身、いまでも時々読み返すことがある。まだ読んでいない方はぜひ読んでみては。
12位から9位。ここに昨年のランキング1位から3位が集結してます。
- 12位 ペルソナ戦略―マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする/ジョン・S・プルーイット
- この本は去年1位でした。当時は確かに日本語で読めるペルソナを紹介した本はなかったからね。でも、いまは結構あります。さっきのアラン・クーパーのものもそうですし、あと2冊ランクインしてます。
- 11位 グッド・ルッキング―イメージング新世紀へ/バーバラ・M・スタフォード
- バーバラ・M・スタフォード。この人の本を今年はじめて読んで衝撃を受けました。僕が最近、白川静さん、田中優子さん、杉浦康平さん、そして、この本の訳者でもある高山宏さんの本に非常に関心を示しているのもこの本と出合ったからです。「グラフィックな表現を救えというのは、芸術、人文諸学、そしてもろもろの科学の境界を超えざるをえない課題」。そう。この人が展開するイメージングサイエンスの分野にこそ、バラバラの世界をつなぐためという課題を克服するヒントがあると思う。読め!そして、つなげ!
- 10位 デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方/奥出直人
- 前年2位の1冊。今年もベスト10入りしています。僕が「デザイン思考」という言葉を最初に知った1冊でもあります。
- 9位 発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法/トム・ケリー
- この本も昨年3位から引き続きベスト10入り。ユーザー中心デザインやデザイン思考を語る上ではもはや古典?
8位から5位。ここでのキーワードは「わかる」ですね。
- 8位 「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学/山鳥重
- 「わかる」というのは僕自身、この1年こだわってきたキーワードのひとつです。この本は脳科学の視点から「わかる」とはどういうことかを考察した一冊。あっ、タイトルのままですね。この本では「わかる」というのは生物本来的な欲求であることが書かれています。同時に言葉をわかろうとしない現代人の心がそうした生物的欲求から離れてしまっていて不健康であることも示唆しています。あらためて要約してみて、そりゃ、そうだ、そうでなきゃ情報の意味がわからないなんて勝手に納得してます。
- 7位 「わかる」ことは「かわる」こと/養老孟司、佐治晴夫
- 16位にも松岡さんとの対談で登場した佐治晴夫さんが養老孟司さんと対談した一冊。「わかる」ことは「かわる」こと。これは個人的に今年の名言ナンバー1です。デザインする過程での創造性とは自分自身が変わることだとこの本を読む以前からずっと思っていたことですが、その創造性には「わかる」が関わっていることに気づかせてくれた一冊です。養老さんが「じゃあどうしたらいいんですか」というのはまったくの間違いといっているのも、そうだそうだ!と妙に納得したものです。
- 6位 Webサイト設計のためのペルソナ手法の教科書 ペルソナ活用によるユーザ中心ウェブサイト実践構築ガイド
- この本に関しては書評はありません。ぺらぺらとめくっただけで読んでないからです。でも、売れたんですね。
- 5位 わかったつもり 読解力がつかない本当の原因/西林克彦
- この本は昨年ランキング15位。それが今年は5位。ちょっと驚き。8位のところで、現代人の心がわかるという生物的欲求を欠いて不健康な状態にあると書きましたが、まさにわかったつもりになって、それ以上、わかろうとする好奇心を遮断することの問題はこの本も指摘するところ。「わかる」ということの必要性を完全に誤解していて、逆にそれが余計に心を不健康にさせてしまっているんだなと思うばかり。みんな、情報過多だと勘違いしてるんですよね。情報なんかぜんぜん増えてない。その意味はバーバラ・スタフォードの本を読めばわかります。今年はこのあたりがテーマかな。
そして、いよいよ4位から1位。
- 4位 なぜデザインなのか。/原研哉、阿部雅世
- 昨年同様4位をキープしたのがこの本。この本を含め、1位から4位は全部、デザインに関わる仕事をしている人は読んだ方がいいと思う。デザインとは「生活文化をつくる仕事」という阿部さんのことばに僕はデザイン観をすっかり変えさせられました。
- 3位 自分の仕事をつくる/西村佳哲
- この本が去年の5位から引き続き3位にランクしていることが驚き。だって、今年はこの本にあんまり触れていないですから。やっぱりタイトルですか? なんかみんな自分が生きるための指針を外に求めているんですかね。まぁ、それ自体は当たり前のことだと思うんですけど、あまりにその指針の求め方が直接的じゃないのかなって思います。一気に答えにたどり着こうとする。答えへの道のりを自分で組み立てようとしないんですよね。さっきの「わかる」ことを遮断してしまうのと深く関連してある種の病気なんだと思います。病気は言いすぎでも心が弱ってしまっている。「わかる」こともあきらめ、自分で答えを組み立てることもできない。この本に関してあるのは、それとは正反対のことだと思います。文字通り、自分の仕事をつくる。自分での仕事をデザインして組み立てることです。
- 2位 表象の芸術工学/高山宏
- 「デザインに関わる人はこれを読まずにデザインを語れない」。この本の書評を書いた時、僕はそう言いました。それもあっての2位? でも、いまもその思いは変わりません。まさに「わかる」ことを遮断し自分で答えを組み立てられない現代人が真っ先に読むべき本だと思います。情報過多なんて嘘ですし、ものが余っているなんていうのも嘘。自分でわからないといけない情報はいくらでも眠っていますし、足りていないものもたくさんある。18世紀の人びとは同じように情報過多、もの余りと感じられる状況に接して、いまとは違い、必死に情報整理、ものづくりを行ったことがこの本を読めば理解できます。その意味で「これを読まずにデザインを語れない」と強く思います。そして、この本はさらに読むべき本が何かを示唆してくれることでも貴重。
- 1位 ペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイト/棚橋弘季
- ありがとうございました。この本に関しては何よりそれが一番です。正直、この本をランキングに含めていいものかも迷いました。でも、実際、注文数が多かったのだから入れておこうと。
この本を書いていたのはちょうど去年の今頃。大晦日も正月も感じられなかったのを覚えています。覚えているのは今年もおんなじ状況だから? というわけで、来年もまたよろしくお願いします、という意味不明なことも書いておきます。いずれにせよ買っていただいた方、読んでいただいた方、本当にありがとうございます。そういう方々がいてくれてはじめて、僕も本が書けるというものですから、これほどありがたいものはありません。本当に感謝しています。ありがとうございました。
以上が今年のAmazonアソシエイト注文数ベスト20でした。
そして、これが2008年最後のエントリーになりました。
みなさん、今年も当ブログをご愛顧くださり、ありがとうございました。来年もまたよろしくお願いいたします。
みなさんもよいお年をお迎えください。
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