ユーザー中心のWebサイト設計・ワークショップ1日目

昨日は、以前「ユーザー中心のWebサイト設計に関するワークショップを開催します。」で告知した、デジタルスケープ主催の「ユーザー中心のWebサイト設計」で講義とワークショップの講師をやってきました。

今回の講義では、昨日と来週の土曜日の2日間にわたって、ユーザー調査からペルソナ/シナリオの作成、そしてペーパープロトタイプの作成までの一連の流れを体験してもらいます。2日間計10時間で行いますけど、UCDの流れをほぼひとまとめに体験してもらうので、かなりタイトな時間のなかでの作業になります。

昨日(1日目)のタイムスケジュールはこんな感じ。

10:00 会場説明、注意事項伝達
10:15 チーム編成発表・自己紹介
10:20 講義
11:10 演習のオリエンテーション・インタビュー風景ビデオ上映
11:40 昼食
12:40 ワークモデル作成(3名分)
14:10 休憩
14:20 KJ法によるデータの統合~ペルソナ作成
15:40 作成したペルソナの発表、宿題発表
16:00 終了・解散 

ほとんど午後だけで、ユーザー調査結果の分析からKJ法によるデータ統合、ペルソナの作成までの流れを作業してもらいました。普通はこんなスピードでやりませんから、やってみるまでは本当に終わるかどうかわかりませんでした。

とはいえ、終了時間は、予定の時間を30分オーバーしただけ。参加した皆さんはその時間内に、予定していたすべての作業を終わらせました。優秀です。



講義&演習のオリエンテーション

午前中は、僕からユーザー中心のデザインが必要な理由、ユーザー中心デザインのプロセスと今回のワークショップで体験していただく手法について簡単に説明しました。



そのあと実際の演習に入り、まずは事前に実施しておいたユーザー調査風景のビデオを見てもらいました。

今回の演習のテーマは「旅行計画を立てる人のための旅行情報サイトのデザインをする」ことです。
ですので、見てもらったユーザー調査も、最近、旅行に行った人が、旅行の計画を立てる際に行った一連の情報収集や同行者との相談などについてインタビューした内容のものでした。

事前に3名の対象者にインタビューしましたが、時間の関係もあり、すべてのビデオを見てもらうことはできませんので、1人のインタビュー内容を15分ほど見ていただき、あとは調査結果を対象者ごとのシナリオにしたものを配布し、昼食のあいだに読んでおいてもらうようにしました。

ワークモデル作成

昼食後は、調査結果のシナリオを5つのワークモデルを使って分析する作業をしてもらいました。

作業方法は、インタープリテーション・セッションと呼ばれるワークショップ形式で行います。インタープリテーション=解釈です。
調査結果のテキストデータをモデル化することで、ユーザーの行動の構造を分析します。どの行動がどんな背景をもって行われたか、あるいは行動と行動の関係性はどうなっているのかを、モデルを描くことで把握していくのです。



参加者は2チームに分かれて、それぞれ

  • 司会者
  • 調査データを報告する人
  • フローモデル&文化モデルを描く人
  • シーケンシャルモデルを描く人

の4つの役割を分担しながら作業してもらいました。
3人分の調査データがあったので、役割をローテーションしてもらいながらひとりが必ず1つはワークモデルが描けるようにしました。



インタープリテーション・セッションのなかで行うワークモデル分析で、ユーザーがどの段階でどんな目的で情報収集行動をどんなメディアで行い、そこで集めた情報を誰にどんな風に見せながら、最終的に旅行のプランを練り上げていったかをしっかりと把握し、その分析を通じて現在の旅行情報サイトの改善・イノベーションにつながるような発見が得られないと、あとはどんなにペルソナやシナリオを描こうと、結局、できたWebサイトはありきたりのものになってしまうという非常に重要な作業です。
まさに「頭のなかの知識の流れを外のモノに置き換えることのむずかしさ」で書いたような、ユーザーが普段行っている作業のいずれをWebサイト上での作業に置き換えるかの目星をつけて、その置き換えを可能にするために元の作業そのものをしっかり把握するというのがこのワークモデル分析の目的なんです。
ようはここが明確に分析しきれていないと、まともなUIはデザインできないんですね。

今回は90分で3人分の分析を行うという時間的な制約、実際にユーザー調査を見たわけではなく、それを元に記録した個別シナリオのみから分析を行うという2つの制約条件がありましたので、重要な発見につながるまでの分析はできなかったようです。

でも、ここが一番大事なところなので、来週までにそれぞれがもう一度、個別シナリオを読みなおしながらワークモデルを描いて分析してみるといいかなと思います。

KJ法によるデータの統合~ペルソナ作成

ワークモデル分析が終わった後は、3人の調査対象者のデータのうち、2人のデータを統合して1人のペルソナを作成してもらいました。
ここでようやく床での作業がはじまりました。最近のワークショップを通じて得たノウハウ、

  • 作業は床で
  • 作成した図やアイデアスケッチは壁にはる
  • 役割をローテションさせる
  • 自分たちがつくったものを別のチームに説明する

は、今回も活きました。



まず最初は、個別シナリオから重要と思われる行動要素をポストイットに書きだします。

本来はワークモデル分析でユーザー行動のどこがポイントかが見えていれば、すべての情報を描きださずに必要なものだけが抜きだせます。また、書きだす時点で、どの行動要素と別の行動要素がどう関連し合っているかも見えているはずなので、KJ法で情報整理をする際も簡単になっているはずです。

でも、先にも書いたとおり、時間の関係もあったし、参加者にとってははじめてやる作業なので、KJ法での分類自体でだいぶ苦労していましたね。



それでも、2枚用意した模造紙のうち、

  • 1枚はペルソナ基本文書のほうに入れる、そのユーザーのゴール、属性情報、役割、旅行に関する情報、インターネット利用状況などの情報を整理し
  • もう1枚の別の模造紙には、ペルソナ行動シナリオを書くうえでの元になるような、特定の旅行の計画を立てる際の一連の流れを時系列で整理していく

といいよと助言すると、2つのチームとも20分ほど時間オーバーはしましたがなんとか情報の整理ができました。

ここでワークモデル分析での、フローモデル&文化モデル、シーケンシャルモデルでの分析が活きてくるんです。
ちゃんと計画を立てる過程で誰(あるいはどんなメディア)とどういう情報のコミュニケーションが行われ、それはどんな文化背景の上でその行動が選択されたか、そして、それらの行動はどのような順序で行われたかといった分析が行われていれば、2枚の模造紙(ペルソナ基本文書になるものとペルソナ行動シナリオの元になる2枚)であまり迷わずにポストイットの情報を整理できるはずなんですね。



とはいえ、苦労しながらもなんとかKJ法での情報整理ができた2チームはそれぞれ自分たちが分類した模造紙の情報を見ながら、用意したペルソナ・テンプレートにペルソナ像を表現する情報を書きいれていました。ここは割とすんなりできてましたね。
2チームとも同じデータを使ったので、両チームのつくったそれほど大きな差は見られなかったと思います。

ここも時間の制約があったこと、はじめてのペルソナづくりなので仕方ないことですけど、本当はもうすこしユーザーを深く理解した上で、その情報をペルソナに反映できていないと、それを元に具体的なWebサイトのデザインをしていくというのはむずかしいはずです。あくまでペルソナをつくるのが目的ではなく、ユーザーにとって価値のあるWebサイトをデザインすることが目的ですから。

このページに載せた最初の写真の図のように、UCDの作業の流れは、ワークモデル作成、KJ法によるデータ統合、ペルソナとシナリオの作成、そして、プロトタイプへ、と一連の流れのなかで、最初にユーザー調査で得た情報をいかに有効に編集して、最終的なデザインに落とし込んでいくかという情報編集作業の流れでもあります。
この編集の過程で、最初のユーザー調査で得た情報が劣化してしまっては何にもなりません。むしろ、何がキーとなる情報で何がいらない情報なのかを見極めながら、一見無関係と思われる情報間の関連性を発見して、つなぎ合わせていく。そうした情報編集作業を通じて、いかにユーザー調査からユーザーの隠れたニーズを見出し、それを満たせるデザインを導き出せるかということが求められます。

今回のワークショップはまずはUCDの流れ、手法を体験していただくことが第1の目的なのでOKですが、参加者の皆さんには今後業務で実際にUCDを導入される際には、今回できなかったより深い分析、それに基づくペルソナ作成を目指されるとよいかと思います。

宿題

というわけで、ペルソナができたところで、来週に向けて宿題を2つ出しました。

1つ目は、つくったペルソナに合うと思われる写真をひとり1枚探してくること。
2つ目は、そのペルソナがWebサイトを使って旅行の計画をするための情報収集するシーンのシナリオ案を描いてくることです。

次回の作業は、この写真・シナリオ案をベースに、あらためてチーム内でどの写真を採用するか、どのシナリオの案のどの部分を採用して1つのシナリオにまとめあげるかを議論することからはじめてもらいます。
そして、シナリオが決まったら、それを実際に表現するWebサイトのUIデザインをペーパープロトタイプをつくりながら考えてもらう予定です。
来週もまたタイトな時間での作業になりますが、参加者のみなさん、がんばってくださいね。来週もよろしくお願いします。



それから、この場を借りて、アシスタントとして手伝ってくれた矢野さん、ありがとう。
機転を利かせて、参加者にアドバイスをしてくれたりして助かりました。さすが経験者がいると心強い。経験してる人とそうでない人では物の見え方が違いますね。もちろん、経験してても見えない人はいますけど。来週も引き続きお願いします。

→ ユーザー中心のWebサイト設計・ワークショップ2日目



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この記事へのコメント

  • nakata

    先日のワークショップ、ありがとうございました。書籍を3回読み込んでの参加でしたが、その日5時間のワークショップで、本を読んだ以上の理解度を得ることができました。ワークショップの場の力を実感した次第です。講師の先生、参加者のみなさま、そして主催者の方に感謝いたします。また来週もよろしくお願いいたします。
    2008年10月20日 10:31

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