定量/定性の垣根を越えて全体的な調査~デザインの設計をする

あー、これわかるなー。そして、本当にもったいない

定量調査と定性調査はどっちも専門分野なのでわかれがち、偏りがちという印象がある、という話。UCDな分野では統合されているだろうけど、現場では別れている。
(中略)
どちらかがより効果的ということはなく、組み合わせてはじめてできること、はじめて出る効果がある。だが実際の現場としてそれらをバランスよく配分できていることは本当に少ない。

堀内さんは、「UCDな分野では統合されているだろうけど、現場では別れている」と書かれてますけど、むしろ、分かれている原因は学術的な方面にある気もします。UCDな分野でこそ、定性と定量を的確にミックスして全体のディレクションができる人がいないし、その方向性を示している資料や本も少ないですし。

僕は逆に学術的なほうへの期待はしてなくて、現場がどんどん領域を越えて結果を出していけばいいんじゃないのって思ってます。現場のほうがはるかにフットワークは軽いので。

アクセス解析とユーザビリティ

堀内さんは、具体的にはアクセス解析とユーザビリティが別々になってしまっていると書いていますが、僕が前職で働いていた会社では、これをいっしょに提案して実施することが多かった。

アクセス解析で事実はわかっても、その理由を論理的に明らかにするためには、ヒューリスティック評価のような包括的視点でのデザインのユーザビリティ評価をしないと具体的な問題点には落とせません。具体的にデザイン上のどこがどう問題だからどう直す必要があるかがわからなければ、数字で問題点を拾っても改善のしようがない。
逆にヒューリスティック評価だけだと網羅的にすべての問題点を列挙してしまい、問題の重要度の判定ができませんので、これもまた、どこを優先的に修正すればよいのかがわからない。じゃあ、ユーザーテストをすればわかるかといえば、そんなこともない。テストの対象とする範囲が重要な問題を含む箇所になっていればいいですが、そもそもテスト設計での評価の範囲が真の問題とは別のところに設定してしまえば、網羅的なヒューリスティックと違い、範囲を絞って行うユーザーテストではまったく問題が発見できない可能性さえあります。

どの方法にどんな強みがあって逆にどんな弱みがあるのかをわかっていてはじめて効果的なリサーチからデザインへの方法をコーディネイトできます。とうぜん、定量だけ定性だけなんて無意味なこだわりがあるとそれも不可能になります。
やっぱり定量的なアクセス解析と定性的なヒューリスティック評価のようなものは組み合わせてみて、はじめて真価を発揮すると思うんですよね。

ペルソナと共分散構造分析

これはほかのUCDのプロセスでもいえて、たとえばユーザー理解のためにペルソナをつくったりします。ユーザー調査を経てペルソナをつくれば、そのセグメントのユーザーの理解は非常に深まります。その人のためにどうデザインして、その人に具体的にどんなメリットを与えるかという議論も可能になります。

でもですね、じゃあ、そのペルソナに似た人は市場にどのくらいの割合で存在するの?という話になると、定性調査をメインにつくるペルソナだけでは答えは出ないんですね。
それでやっぱり、複数つくったペルソナそれぞれの市場での出現率を知るために、定性調査を行って共分散構造分析という統計的手法で分析を行います。

この数字がわかれば、どのペルソナを優先するかという判断もしやすくなりますし、それによってどれだけビジネスゴールに近づけるかという仮説も立てやすくなります。

これもさっきのアクセス解析とユーザビリティの話とおなじで、定量の人は「ペルソナだけにデザインしてどうなるの?」と否定的に考える人が多いですし、定性調査をメインにする人も統計解析のことがわからず手を出さなかったりします。

領域横断的に

ご存じのとおり、平気でずかずかと領域の境界を越えてお騒がせしている僕みたいな人間からみると、まったくどうしてこう領域横断的な思考や、興味の持ち方ができない人が多いのかなと感じてしまいます。これがほんとにもったいない。
領域を超えた分野のいいとこどりをして最適なソリューションを組み立てるということができないんですね。パッケージをつくれないというか。

断片的な情報、ハウトゥ型の知識が氾濫する現代社会において、情報を自らの手で獲得し、分析し、そこで得られた知見を実践的な計画へと移しかえ、政策や対策を立案するという高度に知的な能力が求められています。
こうした課題を担うことができる人の思考や行動を支えているのが、本学部の教育理念である「リサーチマインド」です。それは「未知の事柄を大胆にかつ的確に根拠を求めて探求していく精神」を指しており、広い意味での「リサーチ」をやり抜く精神を意味します。

前に「リサーチ・マインド:みがき・きわめる・こころ」というエントリーでも紹介しましたけど、リサーチ・研究・デザイン・ものづくりに必要な姿勢ってこれだと思うんですよね。

そんななか、堀内さんがこう書いているのっていいなーって思いました。

何かひとつの学問に集中していないかわりに、より全体を俯瞰的に見ることができるはずだ。
そのためにずっと学び続けたい。
興味があることは手当たり次第に学習している。興味の範囲がWebまわり、ビジネスまわり、人間まわりなので、だいぶ限定されているはずなので、手当たり次第で問題ないと思えてきた。

「そのためにずっと学び続けたい」っていいですね。僕も常にそう思ってますから、こうはっきり書く人にはとても共感します。しかも、「より全体を俯瞰的に」という領域横断的な姿勢がいいな、と。

あんまり、このブログで特定の誰かをほめることってないですけど、これは「エライ!」っていいたい。読んでなんとなくうれしくなったので、ちょっと書いてみました。

堀内さんって僕的には実は前から注目している方のひとりなんですが、これ読んで、一度お話してみたいなーなんて思いました。

   

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