分かっていることを新たに分かり直す
デザインリサーチ。デザイン思考などのアプローチで用いられる、フィールドワークやデプスインタビュー、デスクトップリサーチなどの様々な調査方法を組み合わせて、デザインの課題を定義するために用いる思考の方法。
そのデザインリサーチをしていると往々にして起こる問題がある。
それはリサーチに関わっていない外部から、リサーチの結果をみて「それはリサーチをしなくてもわかった普通のことでないか」という反応があがるということである。
問題の要因は2つあると思う。
デザインリサーチをしたことがない人には、デザインリサーチによって何が変わったかがそもそもわかりにくいデザインリサーチをした側が、そうした前提に立って、やってない人に自分たちが得たものを伝える努力を怠ってしまう(もしくは、その前提自体の認識がない)
「大事なのは、まだ誰も見ていないものを見ることではなく、誰もが見ていることについて、誰も考えたことのないことを考えることだ」
量子力学の研究で知られる理論物理学者のエルヴィン・シュレーディンガーの言葉だ。
デザインリサーチがリサーチを行う際の立場もこれと似ている。
デザインリサーチの対象となるのは「誰もが見ている」日常的なものであることが多い。それをわざわざリサーチの対象にしようというのだから、「まだ誰も見ていないものを見る」の目的であるはずがなく、「誰もが見ていることについて、誰も考えたことのないことを考える」ことのほうが目的になるのは当然である。